テーマ:映画「8マイル」
書き込み期間:2003/06/09〜2003/06/28
要旨:
 映画『8マイル』の主人公は、外からやってくるチャンスをひたすら断り続けていきます。そして終始淡々と自分の道を行きます。
ほとんどの観客は主人公に対して「何故せっかく飛び込んできたチャンスを掴もうとしないのか、もったいない・・」ともどかしく思うに違いありません。
しかし『8マイル』を見ていて、主人公が私自身と重なって見えました。
私の場合は、単行本出版の誘いが来ても話に乗りませんでした。外からのチャンスという流れに乗って本を出したわけではありません。
その他あらゆる事に対しても、ツキに乗っかってすぐに良い結果を出すような成功の仕方はしてこなかったのです。
運とツキとは何かと疑問に思いました。そういうものにこだわるのが、とても小さな事のように思えてきたのです。
目先の成功を得たいだけなら、運とツキはあった方が良いかも知れません。
しかし、本当に好きな事をして、自分の本当の「生」を生きている人にとって、運やツキなどは関係ないと思います。
目次
○あらゆる瞬間がチャンス
○肝が据わってきた
○運とツキ
○自分のリズムと周囲のリズム
あらゆる瞬間がチャンス

 『8マイル』という映画を観ました。
 この映画の概略はこちらでご覧下さい。
 このHPに行くと、「あらゆる瞬間がチャンス」と書いてあります。
 しかし、映画の展開は、チャンスを捨てるシーンばかりでした。
 あらゆる瞬間がチャンスなのですが、それは外部からのチャンスでした。
 しかし主人公は全部、ダメにしていきます。
 そして最後に言います。「自分の道を行く・・」
 うーーーむ・・
 ところで私も少しだけ共通点があります。
 『不思議の科学V』を出してから随分と年月が経ちました。
 あのシリーズの売れ行きはまあまあだったので、「次はうちで出して下さい」というお誘いも多いです。
 次の自慢ですが(笑)、テレビ局からの出演依頼は月に一本はあります。
 それらは、全部断ります。その前に私は電話に出ないので、彼らとは話も出来ません。
 ある意味では「あらゆる瞬間がチャンス」ではありますが、その「あらゆる瞬間のチャンス」を私は全部逃しています。
 映画の中では取り巻きが彼に言います。「チャンスは全部生かした方がいいよ。」
 しかし彼は、生かしません。
 よく考えてみると、この映画はとても深いです。
 しかし前半はチャンスを逃がす話ばかりなので、全然面白くありません。
 しかし見終わってから、ググッときます。
「あらゆる瞬間がチャンス」・・しかし、「ひとつのチャンスを得れば、全てを逃す」と思います。「全て」とは、自分自身です。
 最後のラップのバトルは、見物(みもの)です。
 ラップのバトルで優勝して、店の人から「ここで働かないか」と誘われても、「自分の道を行く」と言って、プレス工場のバイトに戻って行きます。
 そう言えば、途中で成功しそうになったとき(他人が用意したチャンスで)、仲間は金が入る、女とできる・・なんてはしゃいでいました。
 そのとき彼は言いました。「まだ成功したわけではないだろう・・」
 終始クールを貫く彼です。
 ラップというのは、特に本場アメリカでは全部即興です(たぶん)。
 音楽がかかって、何も言葉が出ない人もいます。
 最後のバトルの前日、ライバルのグループから叩きのめされます。
 口からまだ血が出る状態でバトルに臨みます。
 燃えているけど、クールでした。
 これは私の講演会のシーンとダブりました。
 マシンガントークが冴えるときは、燃えているけど、クールなのです。
 さて、チャンスは掴むべきだと思いますか?
 では、何故私は、単行本を出さないのでしょうか・・

肝が据わってきた

 私は自分の講演会のビデオを見ることができませんでした。
 恥ずかしいのに加えて、自分の「うわずり」を見たくなかったからです。
 「うわずり」は何かと言えば、時空の確信にちっとも触れていないということから起こることです。
 しかしビジネス講演会、神坂さんジョイント講演会を見る気になりました。
 たぶんテンプルも見ることができるでしょう。
 それは一言で言えば「肝が据わってきた」からです。
 映画『8マイル』は、ラップという即興を競う場面がありましたが、主人公は最初トイレで練習していて、出演直前に吐いていました。それほどプレッシャーがきついのです。
 その昔、講演を始めるときは、最初の文句をレジュメに書いておきました。
 「みなさん、不思議研究所の森田です」と・・(笑)
 最近それが無くなり、講演中にも物が考えられるようになりました。
 私は「肝が据わってきた」のです。
 だからそのビデオを見て、自分で大笑いできるようになりました。
 ツキに対して、「それがどうした?」・・と思えるようになりました
 『8マイル』の主人公が「肝が据わった」のは、すべてのチャンスを失い(積極的に失い)、さらに敵方からぶちのめされたあとでした。
 「未来」とか「守るべきモノ」が無くなったとき、本当のチャンスが訪れました。
 それは外からのチャンスではありませんでした・・

運とツキ

 私は、運とツキについて、何だか全く疑問に思っていなかったのですが・・
 「運」と「ツキ」はあるに越したことはない・・と思っていただけですが・・
 意外にも、ドツボそのものだったかも知れません・・
 そもそも運とツキというのは何でしょうか。
 宝くじが当たればツイていたと言うでしょうか?
 小さな契約が取れれば、運が向いてきたと言うでしょうか?
 人間として生まれてきて、運とツキでしょうか・・
 赤信号に出くわさないと、運が良かったでしょうか・・
 運とツキを上げるための本は多いです。特に経営関係では・・
 ビジネスがうまくいくのは、運に乗っているからでしょうか・・
 人間として生まれてきて、運とツキでしょうか・・
 エデンの園でりんごを食べて、運とツキでしょうか・・
 人は自由を欲しながら、運とツキでしょうか・・
 何か、小さくはないでしょうか?何か、セコくないでしょうか?
 『8マイル』の主人公を取り巻く環境はひどいものでした。
 住んでいる家の家主から家賃滞納で追い出されようとしていました。
 同居人は主人公に訊きました。「デモテープは作れることになったの?」
 しかしデモテープは、コネを使わないとできません。
 その映画を見ていた客たちは、私を含めて「おい、早くデモテープを作れよ。チャンスは逃すなよ・・。同居人の中には小さな子供だっているじゃないか・・毎日言い争いをする生活から抜け出せよ」と思ったに違いありません。
 しかしそのコネを自ら壊します。
 出来るルートも持たないくせに、「自分でやるよ」と言います。
 プレス工場で残業を言われて喜ぶ彼・・だって、収入が増えるから・・
 見ている観客は思います。「もっと、どでかいことをやれよ・・」
 ずっと暗いまま、映画は進みます。
 しかし、底辺を流れていたものは、いったい何でしょうか・・
 運とツキ・・クソ食らえ・・俺は俺で生きる・・
 そう言っているような気がしました。
 好きなことをするのに、運やツキは関係ないかも知れません・・
 しかし映画の出だしは必ずしもそうではありません。
 彼は、プレッシャーに負けて、トイレで吐いていました・・・
 「生」の中には運やツキは、存在するのでしょうか・・
 彼は実際には有名になっていきます。
 しかしあの時点でコネを利用して、ツイている人生を運良く生きたら、途中で終わったような気がします。
 中途半端に成功したかったら、運やツキを呼べばいい・・
 本当の「生」を感じたかったら、運やツキを無視した方がいい・・
 運が良かった、悪かった・・ツイていた、いなかった・・
 それは本当の「生」を生きられない、言い訳かもしれません。
 運とツキ・・自由からの逃走の手段の一つかもしれません。

自分のリズムと周囲のリズム

 『8マイル』の主人公は、プレッシャーに負けて、トイレで吐いていました。
 こういう人に、「もっと人生を楽しめよ」と言えるでしょうか・・
 チベットの高僧は、「変化に乗れ」と言いました。
 主人公は、乗ったでしょうか・・
 主人公にとって、ポジティブ・ネガティブとは何でしょうか・・
 もしも彼がカウンセリングを受けたら、ぼろくそに言われると思います。
 自分を手放せ・・もっと楽に生きろ・・
 しかし・・彼の中には「努力」という言葉を感じさせません。
 それは、たぶん、目標がないからだと思います。
 彼の友達が「バトル(ラップの競演)」を勝手に申し込んだとき、彼は怒りました。絶交だとも言いました。コネを蹴っていくのと、似ています。
 でもそれは「自分のリズムと周囲のリズム」との関係だと思いました。
 チベットの高僧は「変化に乗れ」と言いました。
 しかし、彼は周囲のリズムに乗ろうとはせず、ひたすら自分のリズムの方を大事にします。
 ところで、私はツイている人間でしょうか?
 自己評価です。
・出会いはみんな、新聞広告でした。これをツイていると、言うでしょうか?
・こういう仕事をしていれば船井さんとも出会うと思いますが、船井さんは再三言ってくれました「森田さんが本を書くのなら、出版社を紹介しますよ。」
 しかし実際に出したのは、二年も経ってからでした。決して流れに乗って、出したわけではありません。
・出会った人とは、とても長く付き合い、何年も経ってから、彼らの実力を知ることになります。決して、いきなりではありません。
 何を言いたいかと言えば、ツイているなら、すぐに結果が出るはずです。
 『8マイル』の主人公でも、7年もかからなかったと思います
 外からのチャンスでのし上がる人は、魅力無いと思います。
 そうではない人にとって、チャンスは一度では無いような気がします。
 逆に言えば、いつでもチャンスなのかも知れません。
 『8マイル』を見ているときに、「何やってんだよ、チャンスを掴めよ」と思っている私がいました。
 でも淡々とチャンスを逃している主人公・・
 映画を観終わったとき、自分もそうありたい・・と思っていました。
 さらに、自分もそうやっているじゃん・・と思いました(笑)

書き込み期間:2003/06/09〜2003/06/28